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わたしは自由メソヂスト教団より宣教師として派遣され、タイのチェンマイにあるHIV感染者AIDS患者のためのシェルター「バーンサバイ」で働いています。バーンサバイは02年7月7日に開設しました。バーンサバイとはタイ語で居心地良い家という意味です。
暫く前になりますが、タイで日系の会社の社長お会いしました。社員の1人が入院して、見舞ったところ、主治医より、病名はエイズだと聞かされショックを受けておられました。エイズについて教えてほしいということです。どの程度エイズが進行しているのか、その時は良く分かりませんでしたので、一般的なエイズに関する知識や情報をお伝えし、「病状が落ち着かれたら、日本に帰られたらどうか。日本の方が薬の種類も多いし、エイズの患者には障害者手帳も出る、エイズ拠点病院が各地にあるし、病院を紹介もできる。」とお話しました。
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しかし患者さんは既に末期でその後亡くなりました。社長は彼のためにできるだけのことをなさり、お葬式も出されました。社長はエイズだった社員から逃げ出すことはなさらず、しっかり受け止めて、彼にとって一番良い道を探されました。家族にも連絡を何度も取られましたが、お葬式が済んでからやっとお父さんがお骨を引き取りにみえたそうです。お父さんは彼がエイズだとは知りませんでした。後になって分かったことでしたが、彼は日本で治療も受けており、障害者手帳も既に収得していました。しかし、家族には知らせていませんでした。後から考えてみると、彼はタイで死ぬつもりで、日本から逃げて来ていたのだと思います。彼は死を覚悟してタイに来たのでしょうが、タイで仕事も与えられ、友人と共に暮らし、差別されることも無く何年かは楽しく過ごせました。エイズという病気は精神的要素の大きな病気です。ストレスがなく穏やかに過ごせたなら、延命も可能です。現に、死ぬのなら一目娘に会いたいと、歩くこともできず、車椅子で日本から帰って来たタイ人女性の患者さんは娘に会い、家族に会い、日本のように周りから差別されることも無く、わたしエイズなのよと言いながら、抗HIV薬を飲んでとても元気になりました。そして恋もしています。
その後聞いた話によるとタイには何人もの日本人エイズ患者さんが日本から逃げるように来ているそうです。既に亡くなった方も居られて、中には家族がエイズだと聞かされて、遺骨も取りに来ない人も居ると聞きました。それほどに日本ではエイズの患者が差別されているのです。殆どの人がエイズに対する知識が無いため、恐れを抱き患者を差別します。中には家族にも打ち明けられず、地下にもぐってしまっている人たちが居ます。
その後帰国する機会があり、色々見聞きして、いよいよ暗澹たる気持ちに襲われました。現在日本では若い人たちの間で感染者がたいへん増えている、また中高年者では夫妻がともに発病する人たちが増えているのだと聞きました。いわゆる先進国といわれている国ではHIV感染者の数は横ばいか下降しています。日本だけが例外です。HIV感染者の数が増えているのは貧しい国だけです。アジアでは中国、インド、ビルマ、カンボジアでHIV感染者が増え続けています。日本でHIV感染者が増えているのはもちろん経済的理由ではありません。日本で増え続けている理由は日本人がエイズに対して余りにも無知だからです。
もともと「バーンサバイ」は日本にいるタイ人のHIV感染者、エイズ患者さんがタイに帰国した場合のシェルターとして立ち上げました。そして私たちはタイ語のパンフを作り、タイ大使館、領事館、また、タイ料理店や食材店に置きました。あっという間に「バーンサバイは日本にいるタイ人の間で有名になりました。ところが蓋を開けてみると、「バーンサバイ」はエイズ患者の家だと皆が知っているから、あそこだけは行きたくないと言われていると聞かされました。私たちは慌てて、新しい「バーンサバイ」を建てて、其処はプライバシーを守るため、看板はもちろん、住所も出さずに、事務所は別の場所に置こうと運営委員会で提案しました。すると、運営委員の一人(エイズ患者)から凄く叱られました。「バーンサバイ」は一体どんなポリシーを持っているのか?差別を助長するつもりか、「バーンサバイ」は患者が病気を隠す必要がなく、自由に外にも出られて、買い物も、食事もできる。地域にも理解され、地域の人たちも自由に入ってきて、ボランティアもしてもらえるそんな形でなくては駄目だときつく叱られました。日本にいるタイ人の患者さんのために「バーンサバイ」を変えるのではなく、日本の状況こそ変えるべきなのだと深く考えさせられました。
そして新しい土地探しが始まりました。なんと理想的な土地が千坪見つかりました。ジャックフルーツ、バナナ、パパイヤ、ラムヤイ、リンチ、マンゴなど果物の樹が多くて、小鳥もたくさん居ます。何より地域の理解があります。近くに公立の病院があって、エイズ関係のNGOが入っています。また村の中にもエイズの方たちをサポートするNGOがあります。そして堂々と看板が上がっていました。歩いて行けるところに市場があります。この村にはHIV感染者やエイズ患者がたくさんいます。そのため、エイズに対する理解が深く、「バーンサバイ」を地域が快く受け入れて下さいました。土地の登記の時は、地域住民から信頼されている長老さん、エイズ関係のNGOのスタッフも立ち会ってくれました。
「バーンサバイ」の3年目は、新しい家の建設に向かって進みます。入寮する方たちにとって、サバイサバイ(居心地のよい)な家はどのようなものがよいかを、考える年になりそうです。
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